2018年に公開された映画「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」は夢枕獏の小説『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』が原作の歴史ファンタジーミステリー作品です。
監督は中国映画界の巨匠チェン・カイコー。
唐の長安を舞台に、日本と中国を代表する俳優たちが歴史上の人物に魂を吹き込みます。
圧倒的なスケール感と美しい映像美を備えた作品ですが、日本では大コケとも評されました。
この記事では、「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」のあらすじ・キャスト紹介・評価を整理し、その魅力と課題をまとめてみました^^
空海映画(2018年)は〝ひどい〟出来?大コケだった?
映画「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」は、大がかりなセットと豪華キャストで制作された大作映画ですが、なぜ大コケと評されてしまったのでしょうか。
その理由は、タイトル名とストーリーのギャップと、ストーリーの複雑さにあると考えられます。
日本では映画のタイトルに「空海」の名前が入っていたため、偉人である空海の物語と誤解して映画を観た観客も多く、「思っていた内容と違った」との声が相次ぎました。
実際の映画は、中国でのタイトル名「妖猫伝」が示す通り、歴史ファンタジーミステリーです。
また、「空海」のストーリーが複雑に感じられてしまったのは、登場人物が多く、歴史的な背景の知識がない日本人には展開が理解しづらかったからです。
加えて「怪奇」「幻想」「ミステリー」「恋愛」まで詰め込んでしまったため、構成が散漫になってしまったきらいがあります。
これらの理由から、映画「空海」は観客の期待を裏切り、感情移入しづらく、何を伝えたかったのかわかりにくいと酷評を受け、動員数は伸びず、大コケしたと指摘されました。
一方で、偉人空海の伝記映画ではなく、ファンタジーとミステリー要素を備えた歴史映画という前提で観ると、期待は裏切られないはずです。
さらに、中国史の一定の知識があれば、展開も把握できて感情移入しやすかったかもしれません。
そうした意味では、酷評されたのは実に残念だったのではないでしょうか。
空海映画(2018年)を彩ったキャストたち
空海映画(2018年)主演キャスト・染谷将太(そめたに・しょうた)の魅力は?
染谷将太(そめたに・しょうた)が演じる空海は、日本から遣唐使として唐に渡った僧侶で、密教の教えを学ぶために長安の地を訪れます。
劇中の空海は、優れた洞察力と記憶力と知識を持ち合わせながらも、好奇心旺盛でユーモラスな一面もうかがえる好青年です。
唐の詩人・白楽天(はくらくてん)とともに怪事件の謎を解き明かしていきます。
海外映画初出演で初主演の染谷将太は髪を剃(そ)って頭を丸め、中国語を猛勉強し、全編中国語で挑みます。
物静かな佇まいにウイットに富んだ知性派の印象の染谷将太は、飄々(ひょうひょう)とした空海を見事に演じ切ります。
私は、染谷将太の流暢(りゅうちょう)な中国語に驚かされました!
剃髪(ていはつ)も含め、海外主演に対する意気込みを感じました。
また偉人である空海ですが、染谷将太の演技のおかげで、親しみやすいキャラクターになっていたと思います。
空海映画(2018年)で物語の鍵を握るキャストは阿部寛(あべ・ひろし)が熱演!
物語の鍵となる人物、阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)を演じたのは阿部寛(あべ・ひろし)です。
阿倍仲麻呂は空海より前に唐へ渡った日本人留学生です。
秀でた才能に恵まれ、玄宗(げんそう)皇帝の側近として仕えていました。
その玄宗皇帝が寵愛(ちょうあい)した楊貴妃に心を惹かれ苦悩する様子を、阿部寛が熱演しています!
報われない想いに葛藤する阿倍仲麻呂の姿は、物語により一層の切なさを加えます。
阿部寛演じる阿倍仲麻呂の出番は少ないですが、ひときわ存在感を放っていました。
空海映画(2018年)の主要キャスト、ホアン・シュアンの役どころは?
中国の人気俳優ホアン・シュアンの役どころは、唐の詩人である白楽天(はくらくてん)です。
物語では、遣唐使の空海と協力して事件の謎に挑みます。
話し好きで陽気な人物ですが、玄宗皇帝と楊貴妃の愛を題材にした「長恨歌」が偽りであることに納得できないナイーブな詩人でもありました。
物語の終わりに白楽天は、「長恨歌」の裏の真相を突き止めますが、すべてを受け容れます。
楊貴妃と楊貴妃を愛した人物たちの想いに寄り添っているように、私には感じられました。
空海映画(2018年)で楊貴妃(ようきひ)を演じたキャスト、チャン・ロンロンはハマリ役?
楊貴妃(ようきひ)役のチャン・ロンロンは台湾出身の女優で、中国人とフランス人とのハーフです。
唐の長安は開放的で文化的で、多様な人種であふれていたという設定にピッタリだという理由で起用されます。
高貴で華やかな佇まいのなかに、深い哀しみを抱えた楊貴妃を体現していると、私は思いました。
葛藤する繊細な演技と、愛してくれた人たちに応えようとする寛容な愛に心打たれました。
空海映画(2018年)のあらすじは?ネタバレ注意!
空海映画(2018年)のあらすじ
「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」は壮大なストーリーの映画です。
そのあらすじを、huluから引用してみます——
1200年以上前、日本から遣唐使として中国・唐へ渡った若き天才僧侶・空海。あるきっかけで知り合った白楽天という詩人(のちの白居易)との交流を深めていく中、世界最大の都・長安の街は、権力者が次々と奇妙な死を遂げるという、王朝を震撼させる怪事件に見舞われる。空海は、白楽天とともに一連の事件を探るのだが、約50年前に同じく唐に渡った、鍵を握るもう一人の日本人・阿倍仲麻呂の存在を知る。仲麻呂が仕えた玄宗皇帝の時代、そこには国中を狂わせた絶世の美女、楊貴妃がいた。極楽の宴、妖猫の呪い、楊貴妃の真実、歴史を揺るがす巨大な「謎」——。楊貴妃の命を案じた阿倍仲麻呂は何を知っていたのか……? 空海と白楽天、二人が辿り着いた真実とは……? 海を渡った若き天才僧侶・空海と、中国が生んだ稀代の詩人・白楽天。二人はやがて、歴史に隠された哀しき運命と対峙することとなる——。
空海映画(2018年)の結末は……?ネタバレ注意!
怪事件の背後には言葉を話す黒猫の存在があり、その妖猫はかつて玄宗皇帝と楊貴妃に仕えていた猫でした。
空海と白楽天は調査を進めるなかで、楊貴妃の死にまつわる真実に迫っていきます。
歴史的には自害したとされる楊貴妃ですが、実際は権力者たちによって殺されていたことが判明します。
妖猫はその怨念を背負い、楊貴妃の死に関わった者たちへの復讐を果たしていたのです!
さらに、約50年前に唐へ渡ったもう一人の日本人・阿倍仲麻呂が楊貴妃の死の真相を知っていたことも明らかになります。
阿倍仲麻呂は、その悲劇を目の当たりにしながらも、唐の混乱の時代のなかで沈黙を余儀なくされていました。
空海と白楽天は、楊貴妃の死には宮廷内の陰謀と禁断の術が絡んでいることを突き止めます。
真実は、楊貴妃はたんなる「悲劇の美女」ではなく、権力に翻弄された「政治の犠牲者」だったのです。
そして妖猫の正体は、楊貴妃に密かに想いを寄せていた幻術師の白龍でした。
白龍は復讐の念を断ち切り、最終的に鶴となって成仏し、妖猫も静かに息絶えます。
エンディングでは、空海と白楽天は真実を知るものの、それぞれの道を歩んでいき、物語は幻想的な雰囲気のなか、余韻(よいん)を残すようにして幕を閉じます。
空海映画(2018年)まとめ
私は、登場人物の多さと、中国史を把握していないことから、ストーリー展開についていけない場面が幾度かありました。
ですが、楊貴妃を思慕する人物たちの想いには感情移入することができました。
また、歴史ファンタジー大作としての圧倒的なスケール感と映像美は素晴らしいのひと言です。
歴史的史実と幻想的要素が融合した物語で、独特の世界観にすっかり引き込まれてしまいました。
私が思うに、登場人物と史実は字幕版で鑑賞したほうがわかりやすいです。
壮大なスケールと美しい映像を併せ持つ歴史ファンタジーミステリー作品「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」の世界にどっぷりと浸(ひた)ってみてはいかがでしょうか。
▼空海の生涯について知りたい方は、こちら↓↓↓

▼空海について広く知りたい方は、こちら↓↓↓
